隅沢克之 角川書店
要塞バベルの主砲を用いて一気にリリーナシティを攻撃し,効率よく戦争に勝利しようとするゼクス・マーキス上級特佐.完全平和に拘るリリーナは即座に全面降伏を決めるが,自分を取り戻したヒイロはリリーナの記憶回復を優先して行動する.一方,ディズヌフとヴァンを止めに動くW教授らとは分かれ,レディ・アンに呼び出されたファーザーは,思いもよらぬ人物に対面し,かつてない厄介事を任されるのだった.
まあ,なんだ.構成とか後半の駆け足感とかいろいろありましたが,無事完結したので良しとしましょう.個人的には話としてはそうなるだろうなあ,という感じで満足です.ていうか,このこってりした設定を考えるシリーズ構成を起用して,TV版をああいう話に仕立てた池田っちはやはり天才か……(途中で消えなければな).で,スノーホワイトとかのデザインどうするんですかね? 映像化? プラモ化? ダムエーはなんかやる気あるの?
戦闘的にはブラックウイングを片付けた時点でもう敵はいなかったわけで,仲間割れやらゼクスのエピオンとの戦闘描写があっさりなのはしょうがないか.サーベラスもサーペントを塗り替えただけだし...
これまで延々と撒いてきた謎の数々も大体消化された感じ.AC195年の戦争にあんま宇宙戦艦が出てこないのは,直前の月面戦争で大体壊れてたとか,火星生まれの二代目そっくりさんはおそらくはディズヌフが撒いた優秀な人間のクローンの一部なんだろうなとか.まあ,一人目の星の王子様の正体(小説版のエンドレスワルツを読んでないと知らんよな)がまさか解決すると思わなかったのでそこはびっくり.結局,ヒイロ・ユイとアディン・ロウjrがそっくりなのだけは他人のそら似ということでいいんだよな...
全く衰えを見せない老師とか,ちょっとひねくれた大人になった上に結局あんまり妹と和解できた気がしない教授とか,戦争卒業できなくてぼろぼろになった挙げ句最も厄介な役目を任されるファーザーなんかは,実に
ガンダムWらしいなあ,というのがまあ率直な感想です.万人ウケしなそう.
「すぐ『結論』に辿り着きたい気持ちはよくわかります.ですが本当に重要なのは『結論』よりも『思考を続ける』ことなのではないでしょうか? 『矛盾』があるなら考え続けるべきです.『結論』に至るまでの『動機』を重視して様々な選択の可能性を議論し続けることが『完全平和』なのです」
「『平和』は『戦争』と違って,決着をつける必要はないのです.だからこそ理性的に議論を続けられるのです.本来,議論に『武力』は必要ありません.人々を戦争へ駆り立ててしまうのは,思考を停止して『武力』で安易に『結論』を手に入れようとするからです」
ついにリリーナの口から語られた「完全平和」の理想の意味するところ.自由と平和は完全には両立しないんだ,というのはAC世界においての平和は結局のところプリベンターの存在による不自由が支えているということが示しているわけで,その中で完全平和主義という理想がなんなのかと言うと,結論に達しない目標への動機こそを大切にしようという不断の努力って奴な訳だ.この時代に二十年ぶりの復活を遂げた
ガンダムが示す思想として,一つ意味はあるかな.
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